やぶにらみ見聞録

   顎   その2  顎の重要性    

 
 去る平成13年4月開催された全日本剣道連盟の科学委員会で、「咽喉部を保護する用具の活用について」のテ−マで討議されました。

 当職人会でも早速取り上げ、具体的対策として「2重顎の形状」、「取り付けの位置」、「えぐりの深さ」、「顎の中心を盛り上げない事」、「面布団と顎との綴じ革取り付け部分の位置調整」、「顎幅を狭くしない」、「顎長さを短く取り付けない」、「面布団と顎の隙間から竹刀が極力入らないような面布団の芯材質の採用」など、4月末の当会会報にて会員全員が周知認識し、特に面の製造に従事している会員は直ちに対応策を実行に移しています。


 中央が異常にに盛り上がった顎 
滑った竹刀はどこへ向かうのか!
こうした顎の面は避けることが肝心

右面は私が勝手に師匠とあがめる「三枝弘煕」氏の面

顎の厚みと形状をご覧ください。
決して中心部分が異常に盛り上がってはいません。
むしろ平面にちかい状態です。
  
特に「顎」の中心部分の大きな異常なまでの盛り上がりが気になります。
 外側に竹刀の剣先が流れるようにする為との事。 そして顎長さを小さく(短く)、幅を短くしています。
 聞くところによると、幅が狭いと剣先が流れて1本にならないから、との理由だそうです。
また、顎を短くするのも同様の理由で、最近の大手メ−カ−が挙って採用しているそうです。
 
竹刀の剣先が滑るのはいいのですが、剣先は滑ってどこに向かうのでしょうか?
 突きの勢いのある剣先が顎と面布団の間に入るとその先にあるのは------

 他にも、甲手布団の短くなる事、使い易いからとも理由での甲手芯の少なさ、甲骨を肘を保護できるかどうか疑問に思います。
甲骨の損傷は手術不可能と聞いています。  (これは甲手の項目ですね)

できる限りの先細竹刀、規制値ぎりぎりの重量の竹刀追求、といった試合に勝つこと最優先のなりふり構わない防具追求の最近の傾向。
このような剣道を追求してよいのでしょうか?  これが本当の剣道なのでしょうか?




口閉じ位置










口閉じ位置を白棒位置迄下げると、喉元にて(布団奥側)
で約5cm程護られる

 そのほか頬輪に取り付ける2重顎のえぐり角度を増して
上部取り付け面積を増やせば、喉元奥上の保護面積も増加し、竹刀混入の安全対策にもなります。


 頸動脈との位置関係を知る必要がある。  赤色が頸動脈



 使用の際の
 面布団の開きを、
 比べてください。

 
 かつて平成16年3月16日付けで「反りのある竹刀」の使用願いがあるメ−カ−から全剣連に提出されました。
  
 そもそも反りは「引いて切る」為の物であると考えられますが、 竹刀を構える際には反り面を下にして構えるものと思います。 
 ならば、竹刀で面や甲手を叩いた後、刀で切るように竹刀を引く技が有るのでしょうか?  
 またこの反りのある竹刀を構えたとき、先端部が通常の竹刀より6cm以上上を向きますが、この竹刀を通常の剣道で使用し、「突き」をした場合、竹刀がより喉元上部に向かう事実にはどう考えるのでしょうか?
 反りのある竹刀が使用者にどんなメリットがあるのでしょうか? 剣道、剣道具の安全性に貢献できるのでしょうか?
  
反りを入れた理由を疑問に思い、質問したのですが明確な回答は得られませでした。

その後、使用は却下されましたが、メ−カ−としての良識が疑われる事項でした。