やぶにらみ見聞録

  顎        

  職人会では顎と言います。 のど元を守る為の部位を明確にするためあえて。
  5cm4方に精緻を込めて

「顎」  一言でその部品の存在価値と働き、場所とを簡潔に表しています。
面で最初に目に付く「顎」は、顎部分全体で竹刀の突きに対して喉元を守る十分な強度を要求されています。
顎と面金をつなぐ生革部分は、面布団口元部分とも繋がり、肩口を覆う布団と頭部保護の布団部分の開きの分岐点も成し、身長に対しての顎の長さや布団長とのバランス等多くの役目を要求され、まさに扇の要といった所です。

文様下部の段飾り(5段部分)は、表側に折れ曲がるのに都合よくなされ、稽古や試合時の顔の動きに追従し、胴胸とのつかえを回避させるよう工夫されています。

そのわずかな空間に、使う剣士の好みを反映させた文様の考案や、胴胸とのマッチング、まさに職人のセンスと技術を凝縮させ表現しています。

技術と芸術との一致を見てください。

 正式名用は「突き垂れ」とのことです。 一般剣士やこれから剣道を始めようとする人に説明するのが難しく、あえて我々職人会は「あご」と呼んでいますし、これからもその名称を護って行きます。