やぶにらみ見聞録

先革への提案         




昔から竹刀が背中を打つと言われていますが竹刀がどれほど曲がるかご存じですか?
 
竹はその性格上繊維が縦1直線に並び、表面の繊維質がもっとも多く硬く、内面は逆に少なく柔らかくなっています。 そして独特のしなりと復元性、 その性格を利用して表面を削ったり、逆に表面だけ利用したりして、篭や扇子、提灯、唐傘、果ては桶の締め枠材等、様々にうまく硬軟の特性を利用した製品が作られています。
 
竹刀も同様、打ち込む先端部は表面を出して丈夫に、真ん中部分は厚めに(後述)手元は打ち込んだ際の衝撃を手元に残さぬよう表面を削って作っています。  
 その竹刀のしなりと復元を助ける為の「中締め」、握り易さと手元への衝撃を和らげる為の「柄革」、「先革」、「鍔」(以前は皮革製品)等々の付属皮革製品で「しない」が構成されています。

 中でも最重要部分が「先革」です。
 竹片は4本の竹が個別に「しなり」で衝撃を逃がしますが、さらに先革と柄革、中締めの3カ所で補助され、竹の復元性と全体のしなりと強度とを保っています。
 先革の中の竹片はそれぞれ個別に前後に動きますが、その先端部の動き量は(先革の内部での動く量)昔から竹刀先端直径以内といわれ、先端の動き量を1寸以内になるように、竹刀の中央部を厚く、幅広くしたり、節の配置を利用したりして竹刀を作っています。)
 

先革の規格について

 先革長が5cm以上必要と規定されましたが、いたずらに長いと先が重くなったり、琴弦の先端締め部が手元側に下がって竹片の動きを妨げたり、目線に入り気になったりで良い事は何もありませんし、高段者の先生より昔のサイズの「1寸入り先革を」との要望も多くあります。
 最重要ポイントは、竹先端部分がどれだけ「先革」中に入っているか、と「革質」であって、先革全体長だけクリアーにこだわり、作りが悪くて内部に入るが量少く、革質の悪い、柔らかい外材先革が多い現状に憂慮する昨今です。


その上考慮すべきはこの事態。  先革の破損です。




綴じ口のハの字状上部の間隔が狭すぎ、革の強度不足で3カ所破損した先革
楽な仕事のため先端部の革綴じ部を薄く剥いてあり、竹の当たる部分まで革厚が減少し革に穴が開いてしまっている。


竹刀の曲がる様子



手元のしなり
(打ち込んだ時の衝撃をしなりで逃がしている様子)



    姫路工場試験場での皮革強度試験の試験値
    先革にも強度試験をすべき