最近の竹刀の傾向に警鐘          「竹刀」の意味を再考を願う

 平成28年10月、筆者がとくにご懇意を頂いている長野県の高校剣道クラブ顧問の剣道熱血漢先生からメ−ルをいただきました。

 かの先生は有名進学高校で、今先端を行く英語の先生ですが、部活では何故か古式豊かな剣道部の顧問をされています。 
 英語と剣道というその間の大きなギャップにいささか違和感を抱いたのですが、これからの日本を構成して行く若い彼らに対して、剣道を通じて生徒一人一人本人の日本人として生い立ちから自分自身を見つめ将来を考える、という行く末を考慮して指導しておられるお話に本物の「先生」の姿を感じ、深く感動した次第です。
 「新人戦地区予選の竹刀検査で、十数本 が不正ということで撥ねられたのですが、そのほとんどが竹の重なり目が透けて向こう側が見えると言うことでした。
 元々植物ですので乾燥し て縮む可能性はあるのでしょうが、特にネット購入等ではその傾向がありがちと聞きました。 また、中には購入したばかりの竹刀の重量が足ら ないものもありました。
 
 
 本物からの逸脱がここにも垣間見られます。


(また加えてご参考までに、本年度(平成28年の春の高校総体地区予選大会でのことだったと思います。3年生にとっては最後の大会です) ある武道具販売店が、握りやすいと宣伝して販売した竹刀は、右手 の握りの部分の竹を手の形状に合わせて(上側から人差し指の第一関節あたりを流線型に)削り落してありました。
 主催者としては初めて 目にする形状で、それを適切な竹刀とは認め難いとの判断から使用許可を出せませんでした。

(握りの形状について、同専門委員長は、「銃剣道に使う、ライフルの握りのよう な形」と表現していました。)
 
言うまでもなく、申請した選手は、武道具店 からの紹介で購入したにも拘わらずとのことで、大変ショックを受けていました。大事な試合を前にした当日の朝の事です。もっとも、打 突時の柄のしなりを考慮すればあるまじき形状のように思われますが、販売第一主義の考え方が先行の一端だと思われます。)


その先生のメ−ル、これをどうとらえるか?
  剣道をするに当たってまず必要な物は竹刀です。 その竹刀が最近では少し(ほとんどかもしれません)異様な方向に進んでいるように思います。
 2015年剣道日本誌、1月号、2月号にて竹刀を取り上げ、剣士の皆様に竹刀の選び方と日々の点検などの注意点をお願いしておりましたが、まだまだこうした事がご理解を得ず、誠に残念に思います。

 今回は試合に当たっての竹刀検査場での出来事ですが、そもそも竹を乾燥させてから作る物で、完成後いくら竹が乾燥しても先の方(物うち付近)で隙間が見えることはまずあり得ないとの事。 万一悪い竹で反りが出ても中締めで隙間がふさぐはず。 と山口会員の弁。

 竹刀を購入するにあたり、以前はまず選んで素振りをして感覚を確かめ、竹刀の様子を見てそれから秤に、と言った順番でしたが、最近の若い人たちはまず重心位置をはかり、次に出来るだけ先の軽い物と、試合を考慮してか竹刀選定基準がいささか違うように思います。

 一番肝心な要素は、剣道をするに当たって「事故は絶対に合ってはならない」事と思います。
 
 剣士の「先が軽く」と言った要望に応えるため、業者があまりに追求しすぎた結果なのか、先端経のみ規制値をクリア−すれば!とその下部目につかない竹の裏側までも大きく削り、節下中締め位置横幅までも先端部分より狭い竹刀が見られます。 
 この竹刀も安全規格のSSPシ−ル添付済みで、検査済み竹刀を加工販売したと見受けられ、安全性は竹裏節まで大きく削り低下しています。
 竹繊維の基礎知識がない業者に なまじっか竹刀をいじってもらっては繊維を切断するばかりか折れやすくなり危険度増大を招きます。
 重量優先の安易な竹刀加工はお断りです。 

  下画像上竹刀は「胴張り 実戦型」という名目で売られている竹刀。 下竹刀は山口会員の作る古刀作り竹刀。
いずれもSSPシ−ルが貼られている。
一見普通の竹刀に見受けられるが大きな違いがある。   SSPシ−ルとは
 
下画像右は山口会員の作る本来の竹刀の形。 比べて左は今の高校生好みの竹刀。一見ほぼ同じに見えるが、視角度を変え様々な方向から見るとこの竹刀の異様なことが判る。 
 
野球のバットはこのように従来の形から逸脱させていますか?   規制値さえ通ればそれでよいのでしょうか?
 この竹刀には丁寧にもSSPシールが張ってあります。  SSPシールには番号があり、どこから販売されたのか解る仕組みになっています。
 
 竹刀を選ぶ際は信用のあるお店(当職人会会員店、全日本武道具協同組合加盟店、)で、中締め部分の隙間無いこと。 竹裏の削ってないこと等を難しいかもしれませんが確認し、ご自身で竹刀を目視して調子を確かめた上での購入をお勧めします。 
 諸事情で上記加盟店で通販などで購入し、 万一こうした竹刀が送られてきた場合でも、必ず上記加盟店では剣士側に立って責任を持って対応してくれますから、どうぞ購入の際加盟店かどうかお確かめの上購入されることをお勧めします。
先端部と胴部分がそのままの太さで真ん中がやせる事など、手を入れる(加工)以外あり得ない。 


(同じ竹刀を上から見た画像で良く判る)

 左が上の実戦型と言う竹刀

 右が山口会員の作る古刀作り竹刀









画像は剣道日本誌2015年1月号からお借りしました。
 
  上は竹繊維が残してある竹刀。

 下の竹裏側が節上から裏節まで削ってあるのが光具合で良く判る
  節部分から大きく縦割れして、割れた竹刀はどこへ向かうのか?  きわめて危険。
 
 割れた部分のアップ

 最初割れた状態を知らずに使用続けると
 こうした大きく縦割れ状態になる。
 試合中の面を打った状態の竹刀の動きを見てください。  万一折れたら竹片がどこに向かうのか? 想像しただけで恐ろしくなります。

 安易に使いやすさだけ求めて選ぶのではなく

万一の事あれば自分ではなく相手に迷惑を掛けるという意識が必要です