大阪府立産業技術総合研究所では、まず、鹿革を除菌タイプの消臭剤に10回繰り返し含浸−乾燥テストを行い、耐熱性の皮革変化を調査しました。
結果は耐熱性にはあまり変化が現れず、鹿革が丈夫である事が証明されました。
次に強度の変化試験を行いました。 結果、は含浸による革の厚みが増したにもかかわらず、引き裂き強度が大幅に落ちていることが判明しました。
一番興味を引いたのが浸透実験後の鹿革の手触りです。
これは主観の問題かもしれませんが、剣道では特に甲手の手の内革に「素手感覚」が要求され、これが大きく甲手の遣い勝手を左右します。
実験後の鹿革は明らかに硬化しており、鹿革本来の柔軟さがまるで失われています。
先の柔軟さが失われた甲手がまさにそれ。 そして、ぬめりが−−−
何がなせるのかは我々素人にはわからず、対応策に思いあぐんでいる時、 奈良県工業技術センタ−が消臭材の成分について、
「除菌成分は第4級アンモニウム塩系の成分です」とHPに記載されている、との情報をもたらしてくれました。
早速、「第4級アンモニウム塩」なるものを調査したところ、下記のような作用機序があげられており、 *タンパク変性および酵素の切断 *糖の分解と乳酸の酸化など代謝への作用 *膜透過線性障害による溶菌、リンおよびカリウムの漏出 *解糖の促進 *原形質膜の活動を支える酵素に対する作用の可能性
その他の注意書きの中で、
*皮革製品の消毒に使用すると変質させる事があるので使用しない *繊維、布(綿ガ−ゼ、ウ−ル、レ−ヨンなど)に吸着し、濃度」が低下する *血液、体液などの有機物により殺菌力が低下する
等書かれており、早速鹿革製作各社にこの旨「第4級アンモニウム塩」系の薬剤使用中止を要請しました。
返ってきた答えはいずれも、「鹿革なめしや製作過程においてはいずれも使用しておりません」との事。
決して鹿革の材質が落ちたのではありません。
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