消臭剤にご注意を   P-1      

 消臭剤使用に当たってのお願い
 地球温暖化の影響か日本の気温が全国的に上昇しています。 そのせいか剣士の皆様も今まで以上に試合時や稽古時に汗を多くかくようで、
結果的に最近の清潔志向にもより、汗の浸透した防具の臭いを気にする傾向が高校生を中心に目立ちます。
 
彼らは使用後の防具の手入れを施さず、臭い対策として野球のグローブに市販の消臭剤を振り掛けるテレビのコマーシャルの影響もあり、特に臭いの強い甲手や面に消臭剤を多く噴霧して皮革に浸透させています。  その上悪いことにそのまま乾燥させず直ちに防具袋に入れて保管という事態。
 その為防具袋の中で湿気が溜まってしまい、蒸した状態に防具が保たれ、更に車のトランク内に次回の稽古まで放置、と言った事例も多く見られます。       まるでミストサウナの中にに防具を入れたようです。

防具袋も最近はデザインが優先され、防具の保管にはあまり勧められない合成皮革製の防具袋が主流で帆布や木綿などの通気性の良いものが格好が悪いと不人気です。

防具手入れ方法の正しい知識がないのかもしれません。
(昔は道場の鴨居に防具をぶら下げて風通しをし、乾燥させたものです。
その為に胴裏中心に乳革を付け、そこにひもを通して防具をつるす役目をさせています。)


結果的に皮革を弱らせ、革質の破損にまで至る事例が多く見られ、「革が早く痛んだ」などとクレ−ムとして持ち込まれる事が多く発生しています。 

面は繊維(布)部分頬輪や布団内側に噴霧するので面縁革の損傷はあまり多くありませんが、繊維質は確実に劣化し、頬輪や火打ちと言った乾燥しにくい部分は特に劣化が進んでいます。 
 紺革の溶解した様子  鹿毛の団子状と刺し地の色違いの様子

鹿革使用の甲手はまるで跡形もないくらい皮革部分が損傷しています。
手の内革は元の形が不明なくらい堅くなって変形し、ひっぱっても揉みほぐしても何ともならず、まるでプラスチックで作った手の内のごとし。
本来の柔らかさも失われ、これでは竹刀も握れませんし、柔らかさも戻りません。

 甲部分では、紺革の異常な縮み方が目につきます。 鹿革の中で繊維素の密度がもっとも多い、あの強いちび古唐使用の革さえとろけたように破損しています。
 芯材の鹿毛もまるで団子状で、手入れのできないいくらい硬化してしまっています。 
 頭部分をカットして調査してみると、織り刺し生地の色の違いでいかに消臭剤が使われたかわかります。    

 甚だしいのはむっとする鼻につくアンモニアの臭い。    修理しようにもどうしようもありません。

 消臭剤メ−カ−も製品の取扱説明書に「皮革には不適当」と記載してあり、防具に直接の噴霧は不適格と思いますが、使用にあたりほとんど注意事項を読まずに使用しており、その結果の皮革質の破損についての認識がまったく皆無です。       

皮革の損傷の原因は皮革のコラーゲン質の破壊と考えられますが、この件の関して辻本会員が、奈良県の工業センターの協力の下、成分や組織などを調査中です。 
 また、藤岡会員が、大阪府立産業技術総合研究所で、繊維質も含め」総合的に調査依頼中です

結果が出次第、報告いたします。        消臭剤 そのー2へ

 
余談ながら、日本の有名な袋メーカーが特別に研究制作した通気性の良い道具袋。

合成皮革製の防具袋ですが、
特に通気性を重点に制作したとのこと。

外国で制作依頼されておられるメ−カ−も、
このような部分までお心遣いして作られるようお願いします。

また剣士の皆様方もこのような点にまで気を配っていただき、
使用後の防具にも末永く大切に取り扱いいただくようお願いいたします。



あなたの身を守る大切な防具ですから。